気管虚脱はイヌ以外の動物には発症しないイヌ固有の疾病です。気管は管状で、咽頭及び気管支の間に存在する空気の通り道です。この管状の気管が潰れ、気管の一部が狭くなった状態を気管虚脱といい、狭くなった気管では空気の出入りする量が正常より少なくなり、呼吸困難の症状を示すわけです。
初期の症状はアヒルの鳴き声に似たグァーグァーというような咳で、興奮したり、運動後や食後に出現し、咳は数秒から長い時は15分ほど持続します。病状が進行するにつれて口を開け舌や「よだれ」を出し、更に悪くなりますと酸素の不足により舌とか歯肉が青紫色になり、いわゆるチアノーゼの症状を示します。
この病気は小型犬や短頭犬種、例えばヨークシャー・テリア、トイ・プードル、シーズー、ポメラニアン、チワワなどの高齢犬に多く見られますので、遺伝的な因子も原因の一つと思われます。肥満犬にも多数発症し、また仔犬の時から見上げて激しく吠える癖のあるイヌや何回も頸を吊り上げる姿勢をとるイヌなどは年齢を重ねるにつれて気管虚脱になる例が多いようです。
気管虚脱への対処法は①食事療法（食事制限：肥満の抑制、肉食だけで飼育している犬では気管が柔らかくなり気管が潰れやすいので肉以外の食事も与える）、②喉に刺激を与えない（小型犬には首輪をやめて胴輪を使用）、③温度・湿度の調整（夏には気温が上昇し、呼吸器への影響が大きくなるので、犬を飼育する適度な温湿度にエアコン等で四季に応じて調整）、④興奮させない⑤咳への薬物投与（気管を拡張させる薬、咳を鎮める薬、炎症を抑える薬、抗生剤等）⑥酸素吸入などがあります。